SAV-0008 「イモツヘグイ」

危険レベル : カスタード

収容手順

SAV-0008は幅620mm奥行き300mmの木箱に純綿糸製の帯を巻き付け、中央管理局の許可のもと    市に暮らす馬越スズ氏の自宅物置に保管されます。馬越スズ氏とその息子以外の接触を拒みます。定期的な馬越スズ氏の健康診断が途切れた場合、異常性が暴発する可能性が示唆される為、馬越スズ氏は財団の管理する医療機関にて定期的な健康診断を受診する必要があります。

説明

SAV-0008は89×127mmのサイズの写真です。馬越スズ氏の息子が2024年8月2日18時58分46秒に撮影した穴の開いた品種:メロディのジャガイモと思われ、撮影者である馬越スズ氏の息子は「撮影した記憶はあるが、現像した記憶はまるで無い!」と主張しています。
SAV-0008の異常性はその写真を10秒以上視認した場合に生じます。アンコリーノ違反者を用いて行われた調査にて、SAV-0008を10秒以上視認した違反者はジャガイモに異常な関心を寄せるようになり、2日が経過する頃にはジャガイモ以外の食物を口にしなくなります。
爬虫類テストと呼ばれる人外生物を用いたテストでは被験体-099-    ザウルスが用いられ、その際、被験体-099-    ザウルスは、ジャガイモの肉体に2つの眼と牙の尖った口を持つ笑顔に類似した表情のキャラクターのイラストの作成に寝食を忘れ没頭しました。この際、このキャラクターを被験体-099-    ザウルスは「マセイモ」と呼称。
以上の調査の後、馬越スズ氏にインタビューを行っています。インタビューは馬越スズ氏の自宅にて行われました。

インタビュアー:青皿-  
インタビュー対象者:馬越スズ氏

青皿-  :今回はインタビューに応じていただきありがとうございます。
馬越スズ氏:いいのよぉ
青皿-  :では、さっそく質問をさせていただきます
馬越スズ氏:私でよければ、なんでも答えるわよ
青皿-  :ありがとうございます。ではまず、貴女は息子さんが撮影されたあの写真について、なにか心当たりはありませんか?
馬越スズ氏:(沈黙)
青皿-  :あの写真を視認した者たちは、貴女の息子さんを含め、みんなジャガイモ以外の何も認識していないような状況に陥っています。
馬越スズ氏:そうねぇ
青皿-  :しかし貴女は
馬越スズ氏:私だけが無事な理由を聞きたいのねぇ
(馬越スズ氏は卓上に置かれた被験体-099-    ザウルスが作成した「マセイモ」のイラストを指でなぞる)
馬越スズ氏:きっと、イモツヘグイよ
青皿-  :イモツヘグイ?なんですかそれは
馬越スズ氏:2年ほど前にいま98になる祖母から聞いた話です。しかし……いや、まぁ、私がそれを知っていたからって、なんで私だけが無事なのか、という理由にはならないと思うんだけど……
青皿-  :大丈夫です、小さい事でもなんでも教えて欲しいのです
馬越スズ氏:わかりました
馬越スズ氏:イモツヘグイというのは、祖母から聞いた話では、「イモの国の食物を口にすると、イモの国から帰ってこられなくなる」って。
青皿-  :イモの国?
馬越スズ氏:ああ、そう、マセイモ。マセイモの国です。マセイモの国の食物を食べると、一生そのマセイモの国に縛られるんです。マセイモの国は、えっと、そう、死後の世界です
青皿-  :死後の世界ですか。ヨモツヘグイのような話ですね
馬越スズ氏:はい。祖母は歳も歳だから、私もヨモツヘグイを何処かで知って、おかしなアレンジを加えて教えてくれたものだと思ったんだけど、あんな物が出てくると…ねぇ……
(インタビュー終了)

アーカイブ

観察対象:被験体-099-    ザウルス
観察方法:毎日1回の餌やりにて餌A「ジャガイモ」と餌B「ハンバーグ」を与え、関心の過程を観察する

2024/08/04

迷うこと無く餌B
食べ終わるまでに5分40秒かかる

2024/08/05

迷うこと無く餌B
食べ終わるまでに6分2秒かかる

2024/08/06

迷うこと無く餌B
食べ終わるまでに7分15秒かかる

2024/08/07

少し迷い餌B
食べ終わるまでに19分58秒かかる

2024/08/08

迷いに迷ってから餌B
1時間45分6秒かかり、3分の1を残し食事を終了させる

2024/08/09

少し迷い餌A
食べ終わるまでに1分34秒かかる

2024/08/10

迷うこと無く餌A
食べ終わるまでに45秒かかる


SAV-0008
SAV-0008

──インタビュー終了直後、馬越スズ氏の携帯電話に着信があり、祖母が入居している介護施設の職員からであった。警察官に扮し介護施設に送り込まれた白皿-  によると、馬越スズ氏の祖母はどうやら昼食の最中、「伝えたらなくなる」と叫び暴れ出し、テーブルの下に隠れたかと思うと、姿を消したのだと言う。


この記事は@yoruhikuによって書かれました。